ファッション業界では大量生産・大量廃棄、労働問題・人権問題など取り巻く環境が広く知られるようになった一方で、『サスティナビリティ』や『エシカル』といったキーワードが注目されています。
エシカルファッション(Ethical Fashion)とは直訳すると『倫理的・道徳的なファッション』という意味で、分かりやすく表現すると『人にも地球にも優しいファッション』となります。具体的には生地選び、生産、販売に至るまでのプロセスで人と地球環境に配慮して作り上げたファッションを指します。
これまで衣料品やバッグ・靴などの衣料雑貨は低価格路線が主流で、出来るだけ低コストで大量生産する事で安い価格で販売されていました。生産は主に中国やベトナム、バングラデシュなど、企業は低価格を維持するため生産地の生活基準が上がり、労働者の賃金が上がるとより安い労働力を求めて他の国に工場を移転する必要がありました。
そんな中、2013年4月事件が起こります。バングラデシュの首都ダッカ近郊で8階建ての商業ビル『ラナ・プラザ』が崩壊し、死者1,100人以上、負傷者2,500人以上の大惨事になりました。ビルには縫製工場があり、そこで働く従業員の多くが犠牲になりました。
事故発生以前に壁などに亀裂が入っているのを従業員たちが発見。警察からも退去命令が出ていたにもかかわらず、オーナーが無視したこともあり、不慮の事故ではなく人災だったと認定されました。
こうした被害が明るみになるにつれ、『倫理的なファッションを買いたい。着たい』という機運も高まりました。ラナ・プラザの崩壊から1年後の2014年。ファッション活動家たちは消費者が洋服タグを写真に撮りブランドに対して「#whomademyclothes?」と問いただすことを推奨するソーシャルメディアキャンペーンを指導しました。世界で初めてファッションの革命デーとなりました。
この悲惨な事件の前からフランスを始め、ロンドンなどヨーロッパでは人と環境に配慮したファッションビジネスを確立させようという試みは在りましたが、よりエシカルファッションのムーブメントが起こり、一気に世界に広まっていきました。
エシカルファッションの基準
エシカルファッションの具体的な基準は2004年に設立され、世界100か国以上の団体・個人が加盟しているエシカルファッションの推進団体The Ethical Fashion Forumが、下記のように記しています。
- ファストファッションや、安くて使い捨て型のファッション消費に反対する。
※ファストファッションは流行を取り入れた安価なファッションの総評です。価格は安く、手に入れやすいが耐久性がなくシーズンごとに服を使い捨てるようなライフスタイルは限りある資源を無駄使いしていることになるのでやめようという考え方です。
- 生産における労働者の賃金や権利、労働環境を守っている
- 動植物の持続可能な生活を支えている。
- 有毒農薬や価格物質の使用問題に取り組んでいる。
- 環境に優しい素材を使用。又は開発している。
- 水の使用量を最小限にしている。
※主に生産現場が対象。原材料の生産現場で環境破壊がされていないかが基準です。
- リサイクルやエネルギー、ごみ問題へ取り組みしている。
※原材料の生産・縫製・輸送などの過程を対象に、リサイクルや省エネが実施されていること。過剰包装の廃止も対象となります。
- ファッションにおけるサスティナビリティを開発し促進している。
- 新たな取り組みを人々に知らせ、解決策を広めようとしている。
- 動物の権利を保護している。
大量消費・対象清算を想定したファストファッションはコストを極限まで削ったからこその低価格帯です。これらを比較するとエシカルファッションは少し値段が高く感じてしまうかもしれません。
まずは今持っている服を全てエシカルブランドに切り替える!
という極端な行動ではなく出来ることを少しずつ始めてみることが大事になります。
安いものをたくさん買うのではなく、良いものだけを少なく買う。これだけで立派なエシカルファッションの1つの行動です。
1人1人の行動は小さなことですが、ここから始まっていきます。